小学校の宿題④「漢字定着のための工夫と学習法」おすすめ書籍や教材もご紹介

小学:低学年

これまでの記事
小学校の宿題「辛さの理由・取り組み続けた理由」
小学校の宿題②「発達検査でわかった辛さの原因」
小学校の宿題③「小さな変化でとても楽になったこと」

小学校の宿題(主に漢字練習)が苦痛だったラズくん。
前回の記事の通り「小学校が提出日までに数日設けてくれた」おかげで拒絶反応が少なくなり、だいぶスムーズに取りかかれるようになりました。

ですがラズくんの漢字の宿題にはもう一つの問題点がありました。
それは「宿題をこなしても定着しない」😱ということでした。
上の写真は2年生の終わり頃の小テストです。何か漢字テストが残っていないかと探していたら出てきました。一点……😶

インプットとアウトプットを繰り返すことで知識は定着するものだと思いますが、どうにかこうにかインプット……できない状態でまた次のインプットが来るのですから、それは定着しませんよね。
非効率なことをしていて、辛い上に結果も出せず可哀想だったな、と今になって思います。

なぜ定着しないのか

検査結果からラズくんに漢字が定着しなかった理由を考え、書いてみます。私の推測です。

ラズくんは「一時的な暗記が苦手」さらに「意味の見出せない作業に集中が保てない」という特性がありました。

過去の記事 小学校の宿題②「検査で分かった辛さの原因」のTOP画像がラズくんの宿題です。
こちらにもう一度載せますね。

例えば、最初の方にある「書き順のおさらい」も「まずマス目に数字を画数分振ってから、一画ずつ増やしながら漢字を書いていく」という、うっかり間違えないよう神経を使う「作業」となってしまっていました。

さらに、おそらく視空間領域ワーキングメモリを使ったやりとりがスムーズではなく、手先の不器用さ(微細運動の困難さ)も見て取れるので、「漢字の全体からパーツを見て」「書きとる」という行為だけでもとても神経を使うため(多分メモリを使い果たし)その先の「記憶する」ところまでたどり着けないのかな、と思いました。
「アウトプットのために書く」ならば意味があるのでしょうけれど。

日本語を書く作業は、脳の多くの機能を使うのだそうです。
ワーキングメモリだけでなく、音声文字と違って漢字の書きは長期記憶も関わり、視覚認知や運動協調性も関わってくるのだそうです。

多くの機能のうちの、どの部分でどの程度つまづいているのかは人それぞれだと思いますので、子どもの様子を見ながらいくつかの方法を試し、より定着しやすいやり方を見つけていくのがいいのかなと思います。

漢字定着のために試した事

通級に通っているうちに、漢字の覚え方には「唱えて覚える方法」や「成り立ちで覚える方法」、「部首などパーツに分けてパズルのように組み合わせて覚える方法」などがあることを知りました。

最初にラズくんは「言語理解が高いので、成り立ちで覚えていくと良いのでは」と言われました。
また、平均値くらいだった知覚推理の検査でも、形を捉えることに苦手さはありながら、形を言語化することで正当へ導いていたという一面もあったようです。

言語を利用して知覚推理の問題をクリアしていこうとする。そういった、苦手さのある部分を長けた能力で補おうとするなんて、面白いなと思うと同時に、人の能力や学力というものは、そうやって構成されていく総合的な力のことを言うのか、成る程な〜と思いました。


まず、ラズくんは「形の全体から部分を捉え再構成する力が弱そう」という話だったので、部首などをパーツ分けして組み立てる方法は向かなそうなのでやめておこうかな、と思いました。

成り立ちについては度々ネットで調べたりしていたのですが、あるとき、通級でラズくんが指導を受けているあいだに、待合室の本棚に「漢字がたのしくなる本(宮下久夫 他)」という、成り立ちから学べるワークが置いてあることに気づきました。
後日同じものを購入してみたのですが、唱えて覚える「下村式」のワークも一緒に購入してみました。
下村式のワークも、たしか通級で似たようなものを見かけて買ってみようと思ったのだと記憶しています。

結果的に「漢字がたのしくなる本」は私は良いと思ったのですが、古代文字がちょっと取付きにくかったようで😓ラズくんはもともと図形などにそれほど興味がないからか、あまり入り込んでいけませんでした。
このワークは古代文字からの成り立ちだけでなく、パズルのようになっていたり、形声文字の音符で仲間わけしたりと、漢字に より親しむ目的で取り組めたら楽しそうだなと思いました。

さらに、唱えて覚える「下村式」のやり方もラズくんにはイマイチのようでした。
多分ですが、「ヨコ ニホン タテ」などの唱える文言が「意味がない言葉の羅列」のように捉えられてしまったのか?? などと感じました。
私の扱い方が間違っていたのかもしれません……😞
唱えながら書くためのマス目があったので「全部書かなくて良いよ」と2〜3個に留めたのですが、見た目ドリルっぽかったのも、気乗りしなかった理由かもしれません(・_・;
小学校の宿題も、拒否反応が減ったというだけで、積極的にやろうとはしていませんでしたので。

ラズくんはたまたま合いませんでしたが、下村式で書くと確かに書き順を間違えることが無いですし、筆の運びがスムーズになり、唱えることで書くことへの負担感は薄れるように思えました。
字形を見て「線の運び方」や「順序」を捉えることに苦手さのある人は、この下村式の書き方で正確に書けるのではないかと思います。

唱えるといえば、ラズくんも、例えば「窓」という字を「うかんむりにルム心」みたいに覚えている漢字は、いくつかあるようです。
言語的短期記憶が強い人は、このように漢字をパーツに分けて、音のイメージで覚えようとする傾向があるのだとか。

後から知ったのですが、パーツわけして唱える方法は「ミチムラ式」が近いようですね。
ミチムラ式の教材を手にしたことはないのですが、教材のサイトや動画を見ると、部首以外のパーツにも名前をつけ、あやふやになりがちなパーツも見事なまでに整理されていて、こんなに分かりやすい教材は他にないかも! と感じました。

例えば『「南」の中にある、線二本の羊が使われている漢字は「南」と「辛」だけ。「報」や「献」や「摯」などの漢字が出てくるけど、いずれもパーツは「南」か「辛」のみ』
のようにです。この線二本の羊には『羊の一本なし』という名前がつけられていました😃

話は下村式の本に戻ります。
ラズくんにはあまり刺さらなかった唱え方の横に、シンプルな絵とともに成り立ちが少し書き添えてありました。
それがパッと見て伝わりやすく、また絵のタッチがラズくんの好みだったようで、興味を引かれているように見えました。
同じ成り立ちでも、文字の形の変化に着目するのではなく、文章で読んで想像しながら、絵や古代文字で補足するスタイルがいいのかな、と思いました。

「漢字がたのしくなる本」と同じ太郎次郎社エディタスから「白川静文字学に学ぶ 漢字なりたちブック」という本が出ています。
3〜4年生の頃は主にその本にお世話になりました。
学年別に習う漢字一つ一つに、大きなイラスト入りで成り立ちが解説されています。古代文字もちゃんと掲載されていました。

このように、最終的には、やはり「言語での成り立ちを利用して、エピソードをつけて覚える」に行き着きましたが、試してみた教材はどれも個性がありそれぞれに良いものでした。
本人の好みと特性に合わせて、いろいろな選択肢があるのだということを知りました。

「なりたちブック」でなかなか頭に入ってこない漢字は↑このように絵を描いたりして何とか記憶に残したりしました。
もはや成り立ちガン無視ですが、当時は「とりあえず入ればなんでも良い」という感じでした(・・;)

幸いなことに、ラズくんの漢字の大変さも3年生くらいがピークで、そこから徐々に楽になっていったような気がします。
ミチムラ式によると「3年生くらいで多くの漢字のパーツが出揃う」ようなので、あとはそれを使って組み立てていくだけということで、落ち着いてきたのかもしれません。


白川静さんの成り立ちの世界は、とても奥が深く、じっくりと世界観を味わえたらどんなに漢字を好きになれただろうかと思いますが、当時はそこまでの時間と心理的ゆとりがなく、4年生後半からは日能研にも入り、毎週突き付けられる漢字テストをクリアすることで精一杯でした。
他教科もハードでしたし😵

日能研時代に入り忙しくなってきたころ「風船あられの漢字ブログ」様で漢字を検索し、成り立ちをさっと確認するようになりました。
こちらのブログでは系統だてて漢字が掲載されていて、イラストや写真も丁寧で素晴らしかったです!
ラズくんも気に入っていて、スマホのホーム画面から一発検索できるように設定していました。→設定の仕方をこちらの記事で紹介しています。

最後に「漢字の読み」に関してです。
ラズくんは読みに大きな苦手さはありませんでしたが、読めない字はそれなりに出てきたので、紙に書いて、ラズくんが食卓に着いた時に目に入る位置に貼っておき、時々思い出したように「これ読める?」とやってクリアしました。↓ 母も字が下手です……。

確か読み仮名はこのままで貼っておき、出題するときだけ手で隠した気がします。
全部出すのではなくて、日常的に、ふいに数問読ませるようにしました。
全部読ませるのは私もラズくんも疲れるので^^;

ラズくんが億劫に感じないよう、席から「眼球ワンアクション」で見える位置に貼っていました。
字が下手なのは仕方ないとして、負担感を抱かせない程度の、文字の大きさや語数になるようには、気をつけました^^;

このような工夫の甲斐あってか? 日能研の追い上げがあったからか、
TOP画像の頃のラズくんとは別人のように漢字が書けるようになりました。
5〜6年生の頃は、模試でも入試の過去問でも、漢字の読み書きで点を落とすことは無くなりました。

「漢字を書く宿題」メリットは皆無だったのか?

ちょっと思いついたので、普段出されていた「小学校の漢字練習の宿題」をこなすことで、ラズくんにどんなメリットがあったのかを考えてみました。
また、このように改善したらもっとメリットだけを受けられたかな、という部分も考えてみました。
今更意味のない事かもしれませんが、今だから見えてきたこともあるので書き留めておきます。

メリット① 普段は字を綺麗に書けなくてもOKとしていたので、綺麗に書く機会になる

字のバランスや、止めハネ払い、点の位置などがちゃんと書けているか確認する機会になりました。
丁寧に書くのは労力を使うので、一文字につき1〜2回ならよかったかも?^^;と思います。

メリット②熟語や言葉の使い方を確認できる

熟語はドリルに載っている、すでに知っている熟語を丸写しするだけだったので、自分で熟語を調べたら発展性があったかも? と思います。

また、ノートの後半部分に「習った漢字を使って文章を書く」という課題に、ラズくんは強い拘りが出てしまって大変でした……。
自分が気に入った文章でなくては納得できず、「その場に合わせて適当な文章を書く」ということがどうしても出来ませんでした。
痺れを切らした私と夫が3つくらい文章を考えて、どれかを選ぶかアレンジして使え! と言っても聞き入れられず、なんとしてでも納得のいく文章を捻り出していました。
(こだわっている割に、画像の「本」という字が間違っています😵)

異様に時間がかかる原因の一つとなっていたこの作文こそ、親はパスしたかったのですが、ラズくん自身は特に苦しんでいなかったので、難しいところです😓
多くの迷文が生まれたので、読んでいて面白くはありました。。

メリット③ 手の筋トレになった

日能研のある先生が、6年生の夏に毎日手を動かして筋トレをしろとおっしゃっていました。入試で早く文字(算数は計算)を書くために必要だと言うことでした。
実際に6年になると、模試の国語は時間が足りなくなり記述は書ききれなくなります。
国語は大得意のラズくんでしたが、それでも第一志望の国語の記述は一問必ず捨てることにしていたので、捨て問の見極めを練習していました。(全て書ききれる子はいるのでしょうか? きっといるのでしょうね。すごすぎる!)

また、ストレスにならない程度の漢字練習なら、手先を動かす事で脳にも刺激があって良さそうです。

以上が私の思ったメリットです。
「宿題を減らす」という配慮は、当時私が思っていたほど大げさなことではなく、先生に、反復練習を○個ずつくらいに減らしてもいいですか? と言うだけで済んだことなのだな、とは思います。

ですがそれで漢字テストができないと「やっぱり練習量が足りないからだ」と思われてしまわないか?
クラスメイトからちょっかいを受けやすかったラズくんが、ノートを誰かに見られた時に何か言われるのではないか?
などと余計なことを考えてしまって、言い出せなかった面もありました。
ラズくんが宿題を減らしたくない、と言ったのも、私と同じようなことを思ったからかもしれません。

数万個の資料から甲骨文字を「書き写した」白川静先生

最後に、「書くこと」に関して感銘を受けたお話を記させていただきます。
ラズくんが使っていた「白川静文字学に学ぶ 漢字なりたちブック」の白川静先生は、中国で発見された数万個の資料の甲骨文字を、一つ一つ手で書き写したのだそうです。

卜文を記したであろう卜(うらな)い師、丁卜者の持つ意識に、私は写しながら自然と近づいていったのでしょう。
それで私が気が付いた時、古代文字は、なんとその体系を全て明らかにしてくれたのです。
手で卜文を写すという、手の作業が、その手のひら、指、筆先に、古代人を憑依させたのであります。

こちらは、武田鉄矢さんがラジオで白川静さんの自伝かなにかの本を読み上げていらしたのを書き写したものなので、私が勘違いして聞き取った箇所があるかもしれません。自伝が今手元にないため、正確な文章を確認できないのですが……。

また、このように古代人を憑依させながら漢字の研究に没頭したという、白川先生の理論をもとにした『白川静さんに学ぶ 漢字は怖い』という本の中で、著者の小山鉄朗さんは
「三千年以上前に生まれた漢字の古代文字が、ほんの少し説明を受けるだけで、異なる言語を使って生きている日本人にも、いまでもちゃんと理解できるのです」
とも、
「古代中国の人たちと現代の日本人は漢字を通してしっかりと繋がっている」
とも書かれています。

「意味がないと思った作業に興味や集中を保てない」ラズくんは、低学年の頃よく「漢字なんて必要ない! 平仮名だけで通じるし!」と怒っていました。

私は漢字について全く無知だったので、上手く興味を引き出してあげることができませんでしたが、
ラズくんがこの先「漢字を書く」という行為に少しでも楽しさを見出すことができ、書く時間が豊かなものになればいいな、と、白川先生について調べながら思いました。

とりとめもなく長くなってしまいましたが、「漢字定着のために工夫した事」について書いてみました。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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